​🌸『カレンブーケドールは、あの日見た雲に恋をする』🌸 第37話

​🌸『カレンブーケドールは、あの日見た雲に恋をする』🌸

🌸 第37話(最終回):『永遠の飛行機雲 ―受け継がれる黄金のバトン、空に描く愛の軌跡―』 🌸

​数年の月日が流れ、季節はまた、命が最も力強く輝き、万物が祝福に満たされる春へと巡ってきました。

北海道の広大な育成牧場、朝霧が晴れ渡るその場所には、かつて「最強の善戦姫」と呼ばれた私と、空を統べた三冠馬である王子様(コントレイル様)の、すべてを詰め込んだ「未来という名の宝物」が立っていました。

​「……ふふ。見てくださいな、王子様。あの子のあの、バネのようにしなやかな身のこなし。そして……私の自慢だった、あの大地を爆砕するような広背筋の面影を!🌹✨」

​私の隣には、今も変わらず気高く、けれど父としての深い慈愛と穏やかな眼差しを湛えた王子様が、そっと寄り添っています。

私たちの視線の先では、黄金の毛並みを春の陽光にキラキラと輝かせた一頭の仔馬が、重力を置き去りにするかのように大地を蹴り、風を切り裂いて走っていました。

(――BGMが、これまでの苦闘と栄光を回想するように、静かで壮大なフルオーケストラへと。そして、すべての想いを乗せて最高潮へ向かって高鳴る、歓喜と希望の旋律へ――) 🎻🎹✨🌌

​その仔馬が放つ覇気は、王子様の漆黒のスピードと、私の482kgの執念が、奇跡のような配合で溶け合ったもの。

あの子が鋭く踏み込むたびに、静かな牧草地には「ドドドッ!」という、かつての私を彷彿とさせる、重厚で確かな地響きが轟きます。それは、私たちがターフに刻んできた生きた証、そのエコー(残響)でした。

​「……カレンさん。あの子は、僕たちが届かなかったあの空の果てまで、きっと飛んでいける。……僕たちの想いを翼にして、ね。」

​王子様が、温かい鼻息を私の耳元に寄せながら、優しく囁きました。

その時でした。

夢中で走り回っていたあの子が、ふと足を止め、一点を見つめて高く、どこまでも透き通るような声で嘶(いなな)いたのです。

私たちが誘われるように空を見上げると、そこには――。

​どこまでも深く、吸い込まれそうなほど青い空を、真っ二つに鮮やかに切り裂くように。

白く、長く、一筋の、迷いのない**「飛行機雲」**が描かれていました。

​「(……ああ。……あれは。)」

​あの日、中山のパドックで王子様と初めて視線が交差した、あの震えるような瞬間。

あの日、負けても負けても、二人で肩を並べて夕暮れの空を見上げた、切なくも愛おしい時間。

そして、現役という過酷な戦場を終え、二人で永遠の愛を誓い合った、あの幸福な午後。

いつだって、私たちの孤独な闘いと、不器用な恋の頭上には、あの方が描いた、決して消えることのない「誇りの軌跡」がありました。

​私は、溢れ出しそうな涙を黄金の長いまつ毛でそっと堪え、隣にいる最愛の人、そして今まさに未来へと力強く駆け出していく我が子へ向かって、人生で最後の、そして最も愛に満ちた、魂のポエムを贈りました。

​『夢を継ぎ 駆ける黄金 風となり 空に永遠(とわ)なる 飛行機雲よ(完)』

​「……さあ、行きましょう、王子様。あの子が新しく描いていく、眩しい物語を、私たちはこの特等席で見守り続けるのですわ。……愛しています、いつまでも、いつまでも……!!」

​カレンブーケドールは、王子様の温かな首筋に深く顔を寄せ、静かに、そして満ち足りた表情で目を閉じました。

彼女が歩んできた、重くて、騒がしくて、けれど世界で一番ひたむきで美しかった「愛とバルクの5年間」。

その全ての想い、すべての涙、すべての筋肉(エネルギー)は、今、一筋の白い雲となって、果てしない未来の空へと、どこまでも、どこまでも、輝きながら続いていくのでした。🌸✈️☁️🏁💘✨

(カレンブーケドール物語・本編完結)

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