​🌸『カレンブーケドールは、あの日見た雲に恋をする』🌸 第1話

​🌸『カレンブーケドールは、あの日見た雲に恋をする』🌸

🌸 第1話:『黄金の花束、爆誕! ―運命のゲートが開くとき―』

​「……重い。っていうか、狭い! 暗い! 暑苦しい! もう、一体どうなってるのよぉー! 出して! 私をここから出しなさーい!!💥」

​2016年4月23日。北海道千歳市、名門・社台ファームの一角。

私の記念すべき人生の第1ページは、お腹の中から放った、誰にも聞こえない、けれど魂を揺さぶるような絶死のモノローグから始まったのです。📢

​「……ふぅ。やっと、やっと出られたわ。……あ、あれ? ここは……? うわっ、眩しい! 空が高い! 風が冷たくて気持ちいい!✨ ……っていうか、私、今生まれたばっかり!?👶」

​外の空気を初めて吸った瞬間、視界がパッと開けました。

鼻先をくすぐる藁の匂い、そして視界の端でテキパキと動く人間たちの姿。

​「よし、元気な女の子だ! 綺麗な栗毛だな……。さあ、ソラリア、お疲れ様。よく頑張ったな。」

​馬房のスタッフさんが、汗を拭いながら私の体を優しく、でも力強くタオルで拭いてくれます。その大きな手の温もりに、なんだか心の底から安心感が湧いてきて……。

​「……ちょっと、そこのスタッフさん! 拭き方が丁寧なのは認めるけど、私のこの高貴な栗毛を乱さないでちょうだい! 🎀 これ、将来的に絶世の美少女――いえ、競馬界の歴史を塗り替えるレベルの『罪な女』確定なんだから! 💖 ああっ、神様ありがとう! 私を私に産んでくれて!」

​生まれたての子馬の心臓は、自らの溢れんばかりの美貌(?)への感動で、これまでにないほど激しく脈打っていました。💓

しかし、そのナルシシズム全開の至福の時間は、冷徹なまでの威厳に満ちた声によって、一瞬で切り裂かれます。

​「カレン。……スタッフに甘えている暇があるなら、立ちなさい。🐴」

​頭上から降ってきたのは、絶対的な「女王」の声。

そこにいたのは、私の母――ソラリア

かつてチリの競馬場で、圧倒的な力で他馬を平伏させた伝説の女王。その瞳は、生まれたばかりの娘に対しても、一切の甘えを許さない鋭さを秘めていたのです。

​「ええっ、お母様!? まだ外の空気に触れて5分も経ってないのよ!? スタッフさんにナデナデされる時間とか、もっとこう、甘やかされる時間があってもいいじゃない!💦」

​スタッフさんは私の様子を心配そうに見守りながら、「さあ、頑張れ。立てるぞ」と優しく声をかけてくれます。でも、お母様は一歩も譲りません。

​「女王の娘なら、地面に伏している時間を1秒でも短くしなさい。スタッフたちの手は、貴女が自分の力で立った後に、称賛として受けるべきものよ。さあ、重力に抗いなさい。💪」

​「……ううっ、重い……! 地球の重力ってこんなに凄いの!? でも、ここで挫けたら社台ファームの、そして女王ソラリアの娘の名が廃るわ! 見てなさい……スタッフさん、そこをどいて! 私、自力で立ってみせるわよ! よっ、こい、しょぉぉぉぉ!💨」

​一度、二度。

膝が崩れ、鼻先を藁に突っ込みながらも、私は立ち上がるのをやめません。

スタッフさんが「おっと、危ない」と手を差し伸べようとすると、お母様が鋭くいななき、それを制止しました。

​「……はぁ、はぁ。……た、立った。私、立ったわ! お母様、スタッフさん、見て!✨」

​三度目の正直。私はついに、四本の震える足でしっかりと北の大地を掴みました。

「おぉ! 立った! 強い子だ!」

スタッフさんたちがパチパチと拍手をしてくれます。その笑顔と、お母様の満足げな鼻息。

​「……ああっ、立った姿もやっぱり360度どこから見ても完璧! 究極の造形美だわ!💯」

​立ち上がった感動を、再びの自画自賛で上書きする私。

そんな私の耳に、ふと、風に乗って遠くの牧場の賑やかなざわめきが届きました。

​「ねぇお母様、スタッフさん。あっちの牧場(ノースヒルズ)の方はどうしてあんなに騒がしいの?👀」

​スタッフの一人が、遠くの景色を見つめながら呟きました。

「あっちでも、もうすぐ凄いのが生まれるって噂だよ。空を突き抜ける飛行機雲みたいな、とんでもない馬がな。」

​空を飛ぶ子……?

その時の私はまだ、その言葉の意味を知る由もありませんでした。

それが、私の生涯をかけて追い続ける「初恋」であり、最大の「壁」となる王子のことだということも。

​「……ふん! 空を飛ぼうが何をしようが、世界で一番可愛いのは私なんだから! スタッフさん、もっと私を褒めてもいいわよ!✨」

​夕暮れに染まる千歳の空。

**黄金の花束(カレンブーケドール)**という輝かしい名をもらうことになる私は、献身的なスタッフさんたちの愛情と、厳格な母の教え、そしてまだ見ぬ運命の予感に胸を昂ぶらせながら、力強く最初の一歩を蹴り出したのでした。🌸✨

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