🌸 第12話:『宿敵・クロノジェネシス登場! ―氷の眼差し、重すぎる愛―』 🌸
「……ふふ、ふふふふふ! 見てなさいスタッフさん。北海道の原生林でクマを置き去りにし、大地を震わせた今の私なら、王子様の視線を釘付けにするなんて、中山の急坂を登るより簡単よ!!🌹✨」
秋の初戦、紫苑ステークスを目前に控えた美浦トレセン。
私は、泥を落として再び黄金の輝きを取り戻した毛並みをなびかせ、自信満々に廊下を闊歩していました。
脳内ではすでに、秋のG1戦線で優勝し、コントレイル様と夕暮れのターフを歩く「感動の最終回」が、4K画質で再生されています。
「(……王子様、待っていて。今の私は、野生のスタミナと、貴方への愛でパンパンに膨らんだこのワガママボディ……完璧だわ!)」
その時でした。
前方のベンチで、一頭の芦毛のウマ娘が、静かに精神統一をしていました。
透き通るような白い肌、鋭く、それでいて深い知性を感じさせる瞳。
オークスで私の背中を猛追し、3着に食い込んだ、静かなる実力者……クロノジェネシス。❄️✨
彼女の周りだけ、空気がピリピリと張り詰めて、まるで冬の朝のような冷気が漂っています。
「あら、そこにいるのは……確か、オークスで私の『引き立て役』を務めてくれたクロノさんじゃない。元気にしてたかしら? ほら、今の私を見て。野生の力が溢れすぎて、直視できないほど眩しいでしょ?✨」
私はわざと彼女の前で立ち止まり、王子のために磨き上げた「究極の可憐ポーズ」を決めました。
しかし、クロノさんは目も合わせず、低く、地吹雪のような冷ややかな声で呟きました。
「……うるさいわね。少し静かにしてくれない? 集中してるの。……それと、その無駄な装飾、レースには邪魔よ。」
「なっ……!? な、ななな、なんて無礼な! これは装飾じゃなくて、私の魂の輝きなのよ! 私は今、王子様への溢れんばかりの情熱を、全細胞で表現している最中なの! この『愛のオーラ』が分からないなんて、貴女、感覚が凍りついてるんじゃないの!?💢🦁」
私は彼女に詰め寄り、いかに自分がコントレイル様を愛しているか、その愛がビッグバンよりも速い速度で拡大しているかを、身振り手振りで(※かなり必死に)まくし立てました。
「……いい? 王子様の一歩は私の百歩! 王子様の吐息は私の追い風! 私はあの方のために、クマとだって死闘を繰り広げてきたのよ! この愛の重さ、貴女に理解できるかしら!?💖🔥」
すると、クロノさんはゆっくりと立ち上がり、氷の剣で射抜くような冷徹な眼差しを、真っ直ぐに私の瞳へと向けました。
(――BGMが、一瞬で世界を凍結させるような、鋭く冷たいピアノの独奏へ) ❄️🎹
「……いい加減にして。……貴方のそれは、『愛』じゃない。ただの**『執着』**よ。」
「……えっ? 執着……? 💔」
「……それに、何より……愛が重すぎるのよ。 物理的にも、情緒的にもね。そんな過積載な感情を抱えて、よく走れるわね。私なら、100メートルも持たずに沈むわ。……そんな重さじゃ、ゴールは遠いわよ。」
クロノさんは一瞥(いちべつ)をくれると、風を切るような無駄のない足取りで、私の横を通り過ぎていきました。
「…………。…………な、…………ななな……」
廊下に一人取り残された私。
「愛が、重い……? 私のこの純粋で可憐な乙女心が、重たいっていうの!? 物理的って……馬体重のこと!? 確かにちょっと増えたけど、それは『幸せの蓄え』であって、断じてデブじゃないわよぉぉぉ!!😭💦」
「カレン、落ち着け! あいつはお前のライバルだ。精神攻撃に屈するな!🐴💦」
スタッフさんが慌てて駆け寄ってきますが、私のプライドはズタズタ。
でも、そのズタズタの破片の中で、新しい猛炎……「復讐」と「証明」の炎が灯りました。
「……おのれ、クロノジェネシス……。私の愛を『重い』と切り捨てたこと、後悔させてあげるわ……。見てなさい! この『重すぎる愛』こそが、中山の、そして秋華賞の坂を押し上げる、最強のブースターなんだってことを証明してみせるんだからー!! 💢🦁🔥」
夕暮れの廊下。
愛の重さを指摘され、逆に闘志(と執着)を倍増させたカレンブーケドール。
彼女とクロノジェネシス、正反対の二人が激突する秋の戦線は、もはや「重力」すら歪めるほどの、熱く冷たい嵐を予感させていたのでした。🌸❄️🏁


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