​🌸『カレンブーケドールは、あの日見た雲に恋をする』🌸 第13話

​🌸『カレンブーケドールは、あの日見た雲に恋をする』🌸

🌸 第13話:『秋華賞、芦毛の女王にひれ伏す ―宿命の2着、淀に散る―』 🌸

​2019年10月13日。京都競馬場、第11レース。

台風一過の吹き荒れる暴風が、稍重に湿った淀のターフを容赦なく叩きつけていました。☀️🍃

私の心は、かつてないほどの激憤と、触れれば弾けるような純粋な情熱に焼かれていました。

​「……クロノジェネシス、見ていなさい。貴女が『重すぎる』と切り捨てたこの愛が、どれほどの重力を持って、ライバルを、そして運命を支配するか。今日、この淀の直線で、貴女の冷徹な正論ごと粉砕して、私が王子様(コントレイル様)の隣に相応しい唯一の女王であることを証明してみせるわ!!💢🦁」

​前走、紫苑Sでの「あえて」の3着。

すべては、本番であるこの秋華賞で、王子様に見せるための劇的な「戴冠式」の伏線。

私の体重は464kg。一分の隙もない。北海道の原生林でヒグマと死闘(競走)を繰り広げて鍛え上げた野生の筋力は、今や限界まで圧縮されたニトロのように、解放の瞬間を待っていました。💎🔥

​(――BGMが、勇壮なファンファーレから、運命の歯車が狂い出すような悲劇的で重厚なフルオーケストラへ!) 🎻🎺🌪️

​「カレン、行こう。君の愛が重いというなら、その重さで世界を跪かせろ。」

津村ジョッキーの瞳にも、刺すような、どこか狂気を孕んだ闘志が宿っていました。

ゲートが開いた瞬間、私は2番人気の期待を全身に浴びて、弾丸のように飛び出しました!

​ガシャンッ!!💨

​1コーナー、2コーナー。

ラップタイムは12.3 – 10.7という、牝馬三冠最終戦にふさわしい、心臓を削るような殺人的なハイペース。

私は好位の8番手をがっちりと死守しました。

稍重の馬場。蹄を狂わせる泥濘(ぬかるみ)。跳ね上がる黒い泥が、私の自慢の黄金の毛並みを容赦なく汚していく。

「(……ふふ、北海道の底なし沼を経験した私にとって、この程度の泥、上質なクレイパックみたいなものだわ! 汚れれば汚れるほど、私の輝きは増すのよぉ!)」

​3コーナー、そして運命の4コーナー。

京都の魔物「淀の坂」を駆け下りながら、私は野生の牙を剥き、内側へと進路を取りました。

「……いっけぇぇぇぇ!! 愛は重力! 全ての希望を私の重力圏内に引きずり込みなさぁぁぁい!!🔥🌻」

​(――BGMが最高潮に加速! 実況の声が、耳を劈く絶叫に変わる!) 🎙️💥

​「直線、カレンブーケドールが来た! 内を突いて、一気に突き抜ける! オークスの雪辱、今日こそ黄金の花束が淀に咲き誇るか!! 外から他の各馬は届かない! カレンブーケドール、先頭!!」

​残り200m。私の視界からは、誰もいなくなりました。

静寂。聞こえるのは自分の荒い吐息と、大地を叩く蹄音だけ。

「(勝てる……今度こそ、間違いなく勝てるわ! クロノジェネシス、貴女の負けよ! 王子様、見ていて! 私は今、本物の女王に……)」

​しかし。

その確信を、背後から迫る「氷の絶対零度」が、音もなく粉砕しました。❄️⚡️

​「……残念ね。貴方の重さは、ただの足枷(ブレーキ)でしかなかったみたい。」

​一瞬、世界から音が消えました。

外から、まるで銀色の流星が空間を切り裂いたかのような、無駄を一切削ぎ落とした、あまりにも美しく、そしてあまりにも残酷な加速。

芦毛の女王、クロノジェネシス。

彼女は、私が必死にパワーでねじ伏せていた稍重の馬場を、まるで見えない翼で滑るように、一瞬で私を置き去りにしていきました。

​「……なっ!? う、嘘でしょ!? 追いつけない……私の愛が、また……届かないの……!?😱💔」

​(――スローモーション。激しく泥を跳ね上げ、心臓が破けるほど必死に追い縋るカレン。けれど、その差は一歩ごとに、一刻ごとに、残酷なほどに開いていく。1馬身。そして2馬身。その距離は、絶望の深さそのもの) 🐎💨

  • ​1着:クロノジェネシス 1:59.9
  • ​2着:カレンブーケドール 2:00.2

​「………………そんな………………。」

​ゴール板を駆け抜けた瞬間、私の視界は涙でグニャリと歪み、世界は色彩を失いました。

2馬身差。

オークスの「クビ差」よりも、さらに遠く、さらに冷たい、圧倒的な実力の壁。

掲示板の頂点に刻まれたのは、愛など不要と言い切った、あの冷徹な「芦毛の女王」の名前。

​「……う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!! 嫌よ、嫌よ、嫌よぉぉぉぉぉ!! どうして、どうしていつも私の前には誰かがいるのよぉぉぉ!!😭😭💦」

​検量室に戻る途中、私は周囲の視線も忘れ、泥に塗れたまま子供のように声を上げて泣きじゃくりました。

「カレン、凄かったぞ! 堂々の2着だ! 負けた相手が強すぎただけだ!」

スタッフさんが泣きながら抱きしめてくれても、津村ジョッキーが悔しさに唇を噛み締めていても、私の魂はボロボロに引き裂かれていました。

​「……2着じゃダメなの! 2着じゃ、王子様に胸を張って『貴方の隣は私よ』って、言えないじゃない……!! 私が欲しいのは銀のメダルじゃない! あの方の隣で輝くための、唯一無二の冠なのよぉぉぉぉ!!😭😭💔」

​泥に汚れ、涙に濡れた私の黄金の毛並み。

その横を、クロノジェネシスが、感情を一切排除した、氷細工のように美しい勝利者の顔で通り過ぎていきました。

その時、彼女は私を見ることなく、低く、突き放すように言い放ちました。

​「……泣く暇があるなら、その重い愛を、少しは『力』に変えたら? 次は……もっと、私の心を乱すような走りを見せて。」

​「…………。…………おのれぇぇぇ、クロノジェネシスぅぅぅぅ!! 次こそは、次こそは絶対にその冷たい顔を驚愕で歪ませてやるんだからぁぁぁ!! 💢🦁🔥」

​秋の京都、淀の夕暮れ。

またしても「最強の2着」という呪縛に囚われたカレンブーケドール。

けれど、彼女はまだ気づいていません。このあまりにも悔しい敗北が、彼女をさらなる高みへ……そして伝説の怪物たちが集う「ジャパンカップ」という名の修羅場へと、引きずり込んでいくことになるのを。🌸🏁😭❄️

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