​🌸『カレンブーケドールは、あの日見た雲に恋をする』🌸 第35話

​🌸『カレンブーケドールは、あの日見た雲に恋をする』🌸

​🌸 第35話:『その後の二人・ノースヒルズの再会 ―牧場での甘い日常、愛の重量は増すばかり―』 🌸

​北海道、新冠(にいかっぷ)の朝は、肺の奥まで洗われるような透明な空気と、萌ゆる牧草を揺らす清涼な風、そして恋路を祝福する小鳥たちのさえずりで幕を開けます。

かつては「戦い」のために、一分一秒を削るストイックさで目覚めていた私ですが、今の私を目覚めさせるのは、隣のパドックから聞こえてくる、世界で一番高貴で、世界で一番愛おしい「あの足音」です。

​「……ふふ、ご機嫌よう、私の王子様(コントレイル様)。今朝の貴方も、朝霧を纏って咲き誇る白百合のように、可憐で、そして抗いようもなく神々しいですわ。🌹✨」

(――BGMが、感動の告白シーンから一転、春の陽だまりのような、軽快で幸福感に満ち溢れたアコースティック・ギターとフルートの旋律へ――) 🎸🌸🍃

​私が柵越しに、かつての長距離走で培った驚異的な視力で熱烈な視線を送ると、王子様は少し照れくさそうに、けれど現役時代よりもずっとリラックスした、柔らかな表情で歩み寄ってきてくださいます。

​「おはよう、カレンさん。……君は朝から本当に元気だね。その毛艶……なんだか、昨日よりもさらに黄金の輝きを増している気がするよ。……眩しいくらいだ。」

​「分かりますか!? 王子様への愛が、私の480kg超の細胞一つ一つに多幸感という名の肥料を与え、もはや私のバルクは、自ら発光し、周囲の光合成を促進させる『聖域(サンクチュアリ)』へと突入いたしましたの! これぞ愛による生命の神秘ですわ!!💪✨」

​現役時代、極限の482kgまで絞り込んだ私の肉体は、今では少しふっくらとした丸みを帯び、将来お母さんになるための「慈愛のバルク」へと進化を遂げていました。

けれど、王子様への執着……いえ、全霊を懸けた献身的な愛は、引退して一つ屋根の下(?)になったことで、もはや光速を超えて加速する一方です。

​「カレンさん、そんなに見つめられると、少し食べづらいんだけど……。……あ、でも、この一番草、すごく甘いよ。君も、一口食べる?」

​王子様が、ご自身が食んでいた瑞々しい牧草を少しだけ、私の口元へと優しく差し出してくださいました。

その瞬間、私の脳内では**「愛の間接食事:ノースヒルズの戴冠式」**という名の壮大なファンファーレが鳴り響き、心臓が時速70kmのトップスピードで鼓動を打ち始めました。

​「(……ああああ!! 王子様が、王子様が私に『あーん』を……!! これ、これってもう、実質的な銀婚式、あるいは数千年先までの永劫愛の契約ではございませんことぉぉぉ!!✨👼💔)」

​「……カレンさん、すごい鼻息。牧草が全部どこかへ飛んでいっちゃったよ。……それに、顔がすごく赤いよ?」

​「……し、失礼いたしましたわ! 感動のあまり、肺活量が現役時代の最大瞬間風速を軽々と更新し、体温が摩擦熱で沸点に達してしまいましたわ!!」

​午後の放牧時間。二頭で並んで、ゆっくりと牧草地を歩くこの時間は、私にとって三冠の称号よりも代えがたい、宇宙で一番の宝物です。

かつては遠い遠い、王子の背中を追うことしかできなかった私が、今、こうして肩を並べて(物理的な横幅が私が一回り大きいのは、愛の質量ゆえのご愛嬌ですわ)、同じ季節の匂いを嗅ぎ、同じ未来を見つめている。

​私は、王子様のしなやかな首筋にそっと自分の顔を寄せ、静かに、けれど深く、万感の想いを込めた一句を詠みました。

​『戦(いくさ)終え 寄り添う影の 温かき 愛の質量 増すばかりかな(完)』

​「カレンさん。……僕は、君が隣にいてくれて、本当に、心の底からよかったと思っているよ。……これからも、ずっと、ずっと僕の隣で笑っていてほしい。……約束だよ。」

​王子様のその甘く、誠実な言葉に、私の480kgの魂は、ふわりと新冠の空へと舞い上がりました。

最強の善戦姫、そして黄金のバルクを誇った孤高のウマ娘、カレンブーケドール。

彼女の第二の物語は、愛する王子の隣で、世界一「重くて、甘く、そして誰よりも熱い」幸せという名のゴールテープを目指して、ゆっくりと、けれど力強く続いていくのでした。🌸🏡🏁💖✨

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