​🌸『カレンブーケドールは、あの日見た雲に恋をする』🌸 第9話

​🌸『カレンブーケドールは、あの日見た雲に恋をする』🌸

​🌸 第9話:『樫の女王への片道切符 ―執念の蕾、府中に咲き誇る―』 🌸

​2019年4月28日。東京競馬場、第11レース。

「スイートピーステークス」。

それは、一生に一度の祭典・オークスへの、文字通り最後の「片道切符」を奪い合う戦場。

春の陽光が眩しく降り注ぐ府中のパドックに、私はかつてないほどの緊張感を持って立っていました。☀️🌱

​「……負けられない。絶対に、絶対に負けられないわ! 前走、前々走と掲示板を外して、周りは『カレンブーケドールもここまでか』なんて囁いてるみたいだけど……笑わせないで。私の辞書に『諦める』なんて言葉はないの! 王子様と同じG1の舞台へ行くためのチケット、何が何でも、この蹄(ひづめ)で毟り取ってみせるんだから!!🌹✨」

​「カレン、いい気合だ。今日は津村ジョッキーとのコンビ。お前の持てる力、すべて出し切ってこい!🐴💪」

​スタッフさんの激励に、私は短く、鋭く嘶(いなな)きました。

体重は464kg。地獄のカイバ特訓を経て作り上げた肉体は、無駄な脂肪が削ぎ落とされ、一歩踏み出すごとに皮膚の下で筋肉が龍のように波打つ。

2番人気。1番人気は同じ国枝厩舎の期待馬・セリユーズ。……ふん、厩舎のエースの座も、オークスへの切符も、全部私がいただくわ!💎✨

(――BGMが、緊張感あふれるバイオリンの独奏から、運命を切り開く重厚なフルオーケストラへ!) 🎻🔥

​「さあ、カレン。樫の女王への道、僕が開いてみせるよ。」

津村ジョッキーの冷静な声。ゲートに入った瞬間、私の世界は「直線」と「勝利」の二文字だけに塗り潰されました。

ガシャンッ!!💨

​「……っ!!」

​東京・芝1800m。

私は絶好のスタートから、道中は4番手の絶好位をがっちりとキープ。

逃げるレッドアネモスを視界の端に捉えつつ、インコースでじっと息を潜めました。

1000m通過は1分02秒4。ゆったりとした流れ……。けれど、それは嵐の前の静けさ。

砂を被り、他馬と体が接触する。でも、今の私にはそんなの、春のそよ風みたいなもの!

​「(……まだよ。まだ……。王子様に見せる最高の笑顔は、ゴールの瞬間に取っておくんだから!)」

​3コーナー、4コーナー。

外から1番人気のセリユーズが、地響きを立てて上がっていく。

それを合図に、津村ジョッキーの手綱が、私の魂を解き放ちました!!

​「……今よ! 私の翼、樫の空まで羽ばたきなさい!!🔥🌻」

(――BGMが最高潮に加速! 心臓を直接叩くような重低音が響く!) 🎙️💥

​「直線! レッドアネモスが粘る! その内からカレンブーケドール! 鋭い、鋭い伸び脚!! さらには外からセリユーズ、そして未勝利戦の宿敵・シングフォーユーも襲いかかる!!」

​ラスト3ハロン。府中の長い直線が、永遠のように感じられる。

残り400mから200mにかけてのラップタイムは、驚異の11.0秒、10.9秒

私のすぐ隣まで、あのシングフォーユーが、執念の末脚で猛烈に迫ってくる!

​「(……また2着!? シングフォーユーに差し返される!? そんなの、絶対、絶対、ぜーったいに嫌ぁぁぁぁ!! 私が……私が、王子様の隣に行くのよぉぉぉ!! 💢🌻)」

(――スローモーション。極限の叩き合い。跳ね上がる芝の礫。鼻面が並び、火花が散る!) 🐎💥

​最後の100m。筋肉が焼け付くように熱い。肺が破裂しそうなほど苦しい。

でも、私の瞳の裏には、あの廊下ですれ違った王子の、気高くも美しい「飛行機雲」のような瞳が焼き付いて離れない。

あの方と同じ舞台に立つための、たった一枚の招待状……絶対に、誰にも渡さない!!

​「……うおおおおおー!! 私が……私が、1着よぉぉぉぉ!! 💥🏆」

(――静寂。ゴール板を、私の勇気がわずかに先に突き抜ける!) 🔔✨

​掲示板の頂点に、鮮やかに『6』の数字が点灯しました。

  • 1着:カレンブーケドール(牝3) 1:47.7
  • 2着:シングフォーユー(牝3) クビ差
  • 3着:セリユーズ(牝3) 1/2馬身差

​「……勝った。……ついに、掴んだわ。✨」

​掲示板に刻まれた「1」の数字。上がり3Fは33.1秒。

それは、オークスへの優先出走権。私が、世界で一番大好きな人の隣に立つための「パスポート」。

検量室に戻ると、国枝先生が、そしてスタッフさんが、汗と泥でグチャグチャになった私の顔を、最高の笑顔で迎えてくれました。

​「カレン! やったな! これでオークスだ!! お前は今日、本物の『主役』になったんだぞ!!🐴😭」

​「……ふふっ。当然よ……。でも、先生。これはまだ、プロローグに過ぎないわ。🌹」

​私は夕暮れの府中の空を見上げました。

そこには、あの日と同じ、真っ直ぐで力強い飛行機雲が一本、天を貫くように伸びていました。

​「……待っていて、コントレイル様。次はオークス。そこで私は、貴方の瞳に一生焼き付いて離れないほどの、最高の『黄金の花束』になってみせるんだから!! 🏁💖✨」

​春の風にたてがみをなびかせたカレンブーケドール。

彼女の物語は、ついに「G1」という伝説の祭典へと、華やかに、そして圧倒的な覚悟を携えて加速していくのでした。🌸🏆👑

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