🌸 第4話:『美浦・国枝厩舎の門を叩け! ―黄金の蕾、戦場へ―』 🌸
「……ついに来たわ。ここが、私の伝説が永遠に刻まれることになる聖地。中央競馬・美浦トレーニングセンター!!✨🏰」
北海道の凍てつく冬を越え、母ソラリアの地獄のシゴキに耐え抜いた私は、ついに茨城県にある「トレセン学園」の巨大な鉄門の前に立っていました。
馬運車から降り立った私の目に飛び込んできたのは、どこまでも続く真っ直ぐな並木道と、重厚な時計塔。
「見てスタッフさん! あの空気、あの匂い! まるで歴史の教科書の中に飛び込んだみたいじゃない! ここに、あのコントレイル様もいらっしゃるのね……ああっ、どこかに王子の足跡とか残ってないかしら!? 型を取って金メッキして飾るわ!!🌹✨」
「カレン、落ち着けって。鼻息が荒すぎて無口(むくち)が白く曇ってるぞ。今日からはあの名門、国枝厩舎の一員なんだ。粗相があったら末代までの恥だぞ。🐴💦」
馬房スタッフさんは苦笑いしながら、私の手綱を優しく引き締めます。
目的地は、数々の名牝を育て上げ、今や「女王の仕掛人」とも呼ばれる名将・国枝栄厩舎。
そこは、あの伝説の三冠牝馬・アーモンドアイ様が過ごした、いわば「聖域」……。
「ふふん、国枝先生も腰を抜かすでしょうね。まさかこれほどまでに完成された美貌と、母譲りの闘争心を秘めた『究極の素材』が自分から転がり込んでくるなんて! さあ、私の美しさにひれ伏しなさい!✨」
しかし。厩舎エリアの境界線を一歩跨いだ瞬間、私の軽薄な自画自賛は、肺から漏れる小さな吐息と共に凍りつきました。⚡️
(――空気が一変する。BGMは華やかなワルツから、心臓を抉るような重厚なストリングスへ)
「……な、何なの……この『重圧』は……。💧」
そこは、私がこれまで見てきた「牧場」とは、次元が違いました。
厩舎から漂うのは、清潔な藁の匂いだけじゃない。研ぎ澄まされた刃物のような、鋭利な「殺気」に近い緊張感。
すれ違うウマ娘たちの肢体は、無駄な脂肪が1ミリもなく、皮膚の下で血管が龍のように脈打っているのが見て取れます。
「おい、そこ退け! 追い切りだ!!💥」
轟音のような叫びと共に、目の前を何かが「爆発」したかのような勢いで駆け抜けていきました。
**ドォォォォォォォッ!!**という地響き。
巻き上げられた砂が私の顔を打ち、その凄まじい風圧だけで自慢のたてがみがボロボロにかき乱されます。🌪️
「……う、嘘でしょ……? 今の、全力じゃないの? 練習であんな速度が出るの……? ⚡️」
「ああ、あれは重賞クラスの先輩だ。ここ美浦には、あんな『怪物』が何百頭とひしめき合っているんだよ。カレン、お前の美しさなんて、ゲートが開けば一瞬で泥に塗れる。ここでは『速さ』だけが唯一の正義なんだ。🐴」
スタッフさんの言葉が、ナイフのように胸に突き刺さりました。
北海道で「私は特別だ」と信じて疑わなかった自尊心が、粉々に砕け散っていく音が聞こえる。
ここは、可愛いだけで通用するような甘い場所じゃない。
一秒を競い、他者を踏み越え、ただひとつの王座を奪い合う……文字通りの「戦場」。
「……コントレイル様は……あの方は、こんな地獄のような場所で、一度も後ろを振り返らずに頂点へと駆け上がっているの……?👑」
遠くに見える、眩しいほどの青空。
あの日見た飛行機雲の主が立っている「高さ」を、初めて現実として突きつけられた瞬間でした。私の四本の細い足は、自分の体重を支えきれないほど小刻みに震え始めました。
「……カレン? どうした、震えてるのか。……無理もない、怖かったら今すぐ帰っても――」
スタッフさんが私の肩に手を置こうとした、その時。
「……怖い? ……冗談言わないで!!💢」
私は震える膝を、自らの執念でギュッと押さえつけました。
瞳の奥、粉々になったプライドの破片が、再び熱を帯びて溶け合い、今まで以上に鋭い「負けず嫌い」の光となって燃え上がります。🔥
「私が誰だと思ってるの!? カレンブーケドールよ! 『黄金の花束』よ!! 周りが怪物だらけなら、私はその怪物たちを束ねる『最美の女王』になってみせるわ!! 👑✨」
「……カレン……。」
「国枝先生!! どこにいるの!? さっさと私を、あの王子様の隣に並んでも恥ずかしくない、最強の戦士に鍛え上げて頂戴!! 私の才能に、惚れ直させてあげるんだから!!💪🔥」
「……あ、でもその前に! スタッフさん、今すぐ鏡を出して! 砂で顔がグチャグチャよ! 先生への第一印象がこれじゃあ、私の計画が台無しになっちゃうじゃない!!💦💄」
絶望の淵で、乙女の執念をガソリンにして再点火した私。
美浦の厳しい風は、私の決意を嘲笑うかのように激しさを増しますが、私の瞳はもう、真っ直ぐに「頂点」だけを見据えていました。
カレンブーケドール、トレセン学園入学。
ここから始まる全35話(以上!)の物語は、後に伝説となる「最も一途な挑戦」の幕開けとなったのでした。🌸🦁🏁


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