🌸 第10話:『オークス!届かないハナ差の恋 ―樫の女王、涙の戴冠式―』 🌸
2019年5月19日。東京競馬場。
空はどこまでも高く、突き抜けるような青。一生に一度の祭典・オークスを祝福するかのような完璧な五月晴れでした。☀️✨
けれど、私の耳に届く下馬評は、冷たく、残酷なものばかり。「12番人気」。
それは、私という「黄金の花束」を、ただの添え物として扱う世間の評価でした。
「……ふん、笑わせてくれるじゃない。12番人気? 結構よ。その低い数字、ゴールの瞬間に絶叫に変えてあげるわ! 王子様……見ていて。私、今日こそ貴方の隣に立つ資格を、この『樫の冠』を戴くことで証明してみせるんだから!!🌹✨」
「カレン、気負うな。お前は美浦の、国枝厩舎の誇りだ。津村を信じて、府中の坂を越えてこい!🐴💪」
スタッフさんの手が、わずかに震えていました。
私の体重は460kg。地獄のカイバ特訓を越え、削ぎ落とせるものを全て削ぎ落とした肉体は、もはや「お嬢様」の華やかさなど消え失せ、一歩ごとに凄まじい「殺気」を放っていました。💎🔥
(――BGMが、優雅なワルツから、命を削り合うような悲壮なフルオーケストラへ!) 🎻🌪️
「行こう、カレン。世界を驚かせてやろう。」
津村ジョッキーの静かな、けれど火を吹くような闘志。
ゲートに入った瞬間、地鳴りのような歓声が遠のき、私の世界は2400m先のゴール板一点に凝縮されました。
ガシャンッ!!💨
「……っ!!」
1コーナー、2コーナー。私は迷わず好位5番手を確保しました。
逃げるコントラチェックが刻むラップは、1000m通過59秒1……。
観客席から「早すぎる!」とどよめきが上がる中、私と津村ジョッキーだけは確信していました。
「(この死のハイペースこそ、泥を食んで耐えてきた私に味方する……!)」
4コーナー。府中の大欅(おおけやき)を越え、525mの地獄の直線が牙を剥きます。
残り400m。力尽きた先行馬たちを、私は一気に、無慈悲に飲み込みました!!
「……いっけぇぇぇぇ!! 私の翼よ、樫の頂点まで突き抜けなさぁぁぁい!!🔥🌻」
(――BGMが最高潮! 実況の声が、驚きと興奮で裏返る!) 🎙️💥
「……カレンブーケドールだ! 12番人気カレンブーケドールが先頭! 国枝厩舎の隠し玉が、府中の直線を独走する!! 2番手はクロノジェネシス、しかしカレンが止まらない!!」
残り200m。100m。
私の目の前には、誰もいない。ただ、真っ白なゴール板だけが、王子の微笑みのように輝いている。
「(勝てる……勝てるわ! 私が女王よ! コントレイル様、私、ついに……貴方と同じ場所に……!!)」
しかし。
ゴールの瞬間、私の視界の端から、一筋の「黒い雷光」が飛び込んできました。⚡️💥
「……っ!? あ……!!⚡️」
それは、1番人気のラヴズオンリーユー。
あの子が、異次元の末脚で私の心臓を射抜くように並びかけてきたのです。
「……負けない! 負けない、負けない、負けないわよぉぉぉ!! 王子様の隣は……誰にも渡さない私の場所なのぉぉぉぉ!! 💥🏆」
(――スローモーション。二頭が完全に重なり、火花を散らしてゴール板を駆け抜ける!) 🐎💨
一瞬の静寂のあと、電光掲示板に表示されたのは……残酷すぎる「2」の数字でした。🔔💔
- 1着:ラヴズオンリーユー 2:22.8(レコード)
- 2着:カレンブーケドール クビ差
「………………嘘……でしょ……?」
掲示板を見上げた瞬間、私の四肢から力が抜けました。
2分22秒8。従来の記録を大幅に更新する驚異的なレコードタイムで走り抜けて、なお……私の鼻先は、栄光に届きませんでした。
わずか「クビ差」。
「……どうして……。……あんなに、あんなに頑張ったのに……。泥にまみれて、お腹がはち切れるほど食べて、崖も登って……。どうして、あと数センチが、私を拒むのよぉぉぉ!!😭💦」
検量室に戻る途中、私は人目も憚らず、子供のように声を上げて泣きじゃくりました。
「カレン、凄かったぞ! お前もレコードなんだ! 誰もがお前を強いと言っている!」
スタッフさんが泣きながら抱きしめてくれても、津村ジョッキーが悔しそうに肩を落としても、私の涙は止まりませんでした。
「……2着じゃ、意味がないのよぉ……。王子様に、最高の私を見せたかったのに……! 私が一番だって、胸を張って言いたかったのに……!!😭😭💔」
泥と汗でグチャグチャになった私の顔。
一生に一度の、樫の冠。
それは私の指先をかすめ、ラヴズオンリーユーの頭上で無情に輝いていました。
「……ラヴズオンリーユー……。貴方を、絶対に許さない……。でも……それ以上に、負けた自分が、情けなくて、悔しくて、死にそうだわ……!! 💢🦁」
夕暮れの東京競馬場。
レコードを出しながら2着に沈むという「美しくも残酷な宿命」を背負わされたカレンブーケドール。
けれど、この日彼女が流した涙の数だけ、その根っこは誰にも引き抜けないほど強く、深く、大地へと根付いていったのです。🌸🏁😭✨


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