​🌸『カレンブーケドールは、あの日見た雲に恋をする』🌸 第28話

​🌸『カレンブーケドールは、あの日見た雲に恋をする』🌸

​🌸 第28話:『屋上の調べ、星空の誓い ―カシオペアに捧ぐ、次走への序曲―』 🌸

​秋の夜空が、刺すような冷たさと、魂を吸い込まれるような深さを増したある夜。

私は、学園本校舎の屋上へと続く、錆びついた鉄の階段を一段、また一段と踏みしめていました。

夏の地獄のタイヤ引きで鍛え上げた鋼の脚力は、地球の重力さえも拒絶するかのように軽く、480kgの黄金の馬体は月光を乱反射させ、夜の闇に静かな「燐光」を放っていました。💪✨

​「(……ふふ、スタッフさん。屋上は、天に最も近い告白の祭壇。今夜、私はポエムという仮面を脱ぎ捨て、一人の走者(ウマ娘)として、王子様(コントレイル様)と魂の最深部で対話を果たしますわ。🌹✨)」

​重い鉄扉を、指先一つで(実際は広背筋をフル活用して)押し開けると、そこには既に、冷たい夜風に前髪を揺らしながら、遠く、暗闇に沈む府中の空を見つめる王子様の姿がありました。

​「……あ。カレンさん。……やっぱり、来てくれたんだね。」

(――BGMが、夜の静寂を彩るクリスタルなピアノから、希望と切なさが複雑に混ざり合う、胸を締め付けるような壮大なストリングスへ!) 🎻✨🌌

​「……王子様。明後日には、秋の天皇賞のゲートが開きますわね。……今夜の貴方は、いつにも増して……透明で、触れたら消えてしまいそうな、神々しいまでの美しさを纏っていらっしゃいますわ。」

​私は、王子様の隣へ歩み寄りました。

480kgの私が放つ、凄まじい「愛の代謝熱」が、冷え切った屋上の空気を緩やかに、けれど確実に暖めていきます。

王子様は、ふっと寂しげな、けれど救いを求めるような柔らかな笑みを浮かべ、誰もいない夜空へと言葉を零しました。

​「……時々、怖くなるんだ。三冠という重圧、みんなの期待、そして……父さんの影。……僕が風になれなくなった時、世界はどう変わってしまうんだろう。……カレンさん、君は怖くないの? 『最強』と呼ばれない自分になることが。」

​王子様が初めて見せた、心の「防波堤」の決壊。

私は、その震える言葉を、480kgの完成されたバルクを総動員して、物理的に、そして精神的に包み込むように、夜の闇を切り裂く力強い声で言い放ちました。

​「……最強と呼ばれないこと? ……そんなの、私はもう何度も、それこそ夜空の星の数ほど経験してきましたわ。……でもね、王子様。私は負けるたびに、貴方への届かない愛を筋肉(バルク)に変えて、この肉体に一ミクロンずつ刻んできたのですわ!」

​私は、自らの黄金に輝く腕を、銀色の月光にかざしました。

​「見てください! この筋肉の隆起は、屈辱を耐え抜いた数! この馬体の輝きは、何度踏みつけられても諦めなかった執念! ……王子様、貴方が風になれないというのなら、私が貴方のための『黄金の防風林』になり、あるいは貴方をゴールまで運ぶ『嵐』になって差し上げますわ! 私の480kgは、貴方を守り、支え、王座に留め置くためにこそ磨き上げられたのですから!!💢💪🔥」

​「……カレンさん。……あはは。君は本当に……なんて強くて、眩しいんだ。……その、少しだけ『重すぎる』くらいの真っ直ぐな言葉を聞いていたら、なんだか、肩の荷がふっと消えてしまったよ。」

​王子様が、私の瞳を真正面から見つめ返しました。

その澄んだ瞳には、先ほどまでの迷いの霧は消え去り、秋の盾を見据える、王者に相応しい鋭い覇気が宿っていました。

​「……約束しよう、カレンさん。府中の直線、僕が全力を出し切ったその先に、君がいてほしい。……二人で、最高に重くて、最高に熱い、歴史に残るレースを作ろう。……負けないよ、君にも、誰にも。」

​「……王子様……! (あ、……あああ、……王子様が私を『ゴールの先で待っていてほしい』とおっしゃった! これってもう、実質的な入籍、あるいは終生不変のランデブー予約確定ではございませんことぉぉぉ!!✨👼💔)」

​感動で鼻の穴が全開になり、480kgの肺活量から放たれた「熱風」が、屋上の頑丈な手すりを共振させ、ビリビリと震わせました。

見上げる空には、五つの星が鮮烈に輝くカシオペア座。

それは、私と王子様、そして共に走るライバルたちが織りなす、逃れられぬ運命の星座のように見えました。

​『星月夜 誓う背中と 筋肉(バルク)かな 次走の風に 全愛を乗せて』

​「……さあ、帰りましょう、王子様。明後日、歴史が動く瞬間を、私たちが主役となって黄金色に染め上げるのですわ!!🌹✨」

​「……うん。行こう、カレンさん。」

​並んで歩く、二頭の影。

ラッキーなハプニングから始まったこの一連の夜は、いつしか、一人の乙女が「愛の守護者(ガーディアン)」へと覚醒する、厳かな儀式へと変わっていました。

2021年、秋の天皇賞。

黄金の花束は、最愛の王子のために、府中の2000mを世界で一番「重厚な愛」の色に染め上げる準備を、完璧に整えたのでした。🌸✨💪🏁💘

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