🌸 第15話:『京都記念、雨と泥のライバル対決 ―淀の泥仕合、氷の女王ふたたび―』 🌸
2020年2月16日。京都競馬場、第11レース。
空は鉛色に淀み、氷のように冷たい雨が、容赦なく淀の芝を叩いていました。☔️
馬場状態は「重」。かつて黄金色に輝いたターフは、各馬の蹄に耕され、底なしの泥沼へと変貌していました。
「……ふん、雨? 重馬場? 望むところよスタッフさん! 聖夜に3kgのマフラーを背負って自爆したあの屈辱に比べれば、この程度の泥の跳ね返り、極上のファンデーションみたいなものだわ!!🌹✨」
私の視線の先。パドックの隅で、相変わらず感情の欠片も読み取れない無機質な瞳で佇む、クロノジェネシス。
前走、秋華賞での完敗。そして、あのクールな口唇から放たれた「愛が重すぎる」という呪いの言葉。
それを解く鍵は、この泥濘の直線で、彼女を私の後ろに従わせることでしか手に入らない!
「……カレン。またその、無駄に筋肉を強張らせた目つき。馬場がこれだけ死んでいるのに、そんなに肩を怒らせて……。愛だか執着だか知らないけれど、その『重さ』で、沈むわよ。」
「うるさいうるさーい! 貴女のそのスカした余裕を、この泥で真っ黒に塗りつぶしてあげるのが今日の私の仕事なの! 今日こそ、1着の座は私が……黄金の花束が、泥の中から毟(むし)り取ってみせるわ!!💢🦁」
(――BGMが、地の底から響くような重低音のドラムと、激しいバイオリンの旋律へ。雨音を切り裂くような、重苦しくも熱いリズム!) 🥁🎻🌧️
ガシャンッ!!💨
スタートの瞬間、飛び散る泥が私の顔を叩きました。
私はあえて、最後方付近の2番手という、普段の私からは考えられない「忍耐」のポジションを取りました。
1コーナー、2コーナー。
蹄が泥を掴むたびに、ベチャッ、グチャッ、という重苦しい音が心臓にまで響きます。
「(……重い。でも、耐えなさいカレン! この泥の重さこそ、王子様(コントレイル様)へ届かない私の想いの重さなのよ……!)」
3コーナーから4コーナー。
京都の外回り、勝負の明暗を分ける大きなカーブ。
クロノジェネシスが、まるで水面を滑るアメンボのように、力みのない、けれど圧倒的な推進力でポジションを上げていきます。
「逃がさない……地獄の底まで逃がさないわよ、クロノジェネシス!!🔥🌻」
(――BGMが最高潮! 実況の声が、泥を跳ね飛ばすような勢いで耳を劈く!) 🎙️💥
「直線、さあクロノジェネシスが楽な手応えで先頭に並びかける! 内からはステイフーリッシュ、そして大外を回って、泥まみれの黄金! カレンブーケドールが、執念の末脚を見せている!!」
残り200m。
私は叫びました。肺が冷たい雨と泥の混じった空気を吸い込み、喉が焼けるように痛い。
跳ね上がる泥が目を塞ぎ、視界は真っ黒。でも、その闇の先にいる「芦毛の背中」だけは、魂の目で見開いていました!
「いっけぇぇぇぇ!! 私の……私の愛は、泥にまみれても、絶対に、絶対に輝きを失わないのぉぉぉぉ!!💥🏆」
しかし。
クロノジェネシスは、泥を跳ね上げることすら「芸術的」であるかのように、力強く、そして無慈悲に、淀の重馬場を支配していきました。❄️⚡️
「……残念ね、カレン。この泥濘こそ、私の『静かなる力(パワー)』が最も美しく研ぎ澄まされる場所。」
彼女の末脚は、重馬場を物ともせず、私との距離をグイグイと、絶望的なまでに広げていきました。
必死に、泥を食らい、鼻の穴まで真っ黒になりながら追いすがる私。
けれど、ゴール板を駆け抜けた瞬間、目に飛び込んできたのは――。
- 1着:クロノジェネシス 2:16.4
- 2着:カレンブーケドール 2:16.8(2 1/2馬身)
「………………そんな…………嘘よ………………。」
またしても、2着。
またしても、私の視線の先には、悠然と首を振る「彼女」の後ろ姿。
2馬身半という差。それは秋華賞よりも広がった、残酷なまでの「実力の壁」。
雨に打たれ、泥にまみれ、かつての黄金の毛並みは、もはや野良犬のように黒ずんでいました。
「……う、……うわぁぁぁぁぁ!! またなの!? また私は、あの子の後ろ姿を、ただ指をくわえて見送るだけなのぉぉぉ!?😭😭💦」
検量室に引き上げる私。
もはや「可憐なお嬢様」の面影は微塵もありません。
スタッフさんが泣きながら、凍える私の体に温かいタオルをかけ、懸命に泥を拭ってくれます。でも、私の目から溢れる涙は、冷たい雨と混ざり合って、拭っても拭っても止まりませんでした。
「……頑張ったなんて言わないで! 私は、王子様に『おめでとう』って言ってほしかったの……。こんなに真っ黒になった私なんて、王子様は二度と見てくれないわ……!!😭😭💔」
その時でした。
勝ち誇ることも、はしゃぐこともなく、ただ静かに勝利の熱を冷ましていたクロノジェネシスが、私の横を通り過ぎながら、一瞬だけ足を止めました。
「……泥にまみれて、少しは『重さ』の使い方が分かってきたみたいね。……今の貴女の走り、嫌いじゃないわ。……次は、もう少しマシな顔で走りなさい。」
「…………。……な、……なんですってぇぇぇ!? 嫌いじゃないって……それ、告白!? いえ、最大級の屈辱だわぁぁぁ!! おのれクロノジェネシスぅぅぅ!! 💢🦁🔥」
雨の京都、2月の黄昏。
またしても「最強の2着」の刻印を胸に、泥の中で復讐を誓うカレンブーケドール。
けれど、この泥仕合を経て、二人の間には、言葉にはできない「ライバルとしての魂の共鳴」が、微かに、けれど確実に芽生え始めていたのでした。🌸🏁😭❄️


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