🌸 風が吹けばディーヴァが走る──マスクトディーヴァ喜劇譚 第20話

🌸 風が吹けばディーヴァが走る──マスクトディーヴァ喜劇譚

🌩 第20話 秋華賞──涙と嵐の2着

京都競馬場。
秋の空は澄んでいるのに、
どこか張りつめたような冷たい風が吹いていた。

その中心に立つちびディーヴァは、
いつも以上に ツン顔が鋭い。

大観衆のざわめきが、
彼女の気迫をさらに研ぎ澄ませていく。

「今日のディーヴァ……怖いくらい強そう」
「ローズSの雷鳴を超えてる……」

スタッフの声は震えていた。


🌬 パドック──異常な気迫

パドックに入った瞬間、
空気が変わった。

ディーヴァの歩幅は大きく、
首の角度は完璧で、
前髪は風に揺れずに静かに光る。

他馬が視界に入っても微動だにしない。
特に──

リバティアイランドを見た瞬間。

ディーヴァの目が、
静かに、深く、鋭く変わった。

ツンでもデレでもない。
怒りでも焦りでもない。

「あなたを倒したい」
その一言だけを宿した目。

スタッフは息を呑む。

「……本気だ」
「今日のディーヴァは、嵐の化身だ」


🌩 ゲート──完璧な静寂

ゲート入りは驚くほどスムーズだった。

ローズSのときよりも静かで、
まるで嵐の中心にいるような落ち着き。

ゲートの中で、
ディーヴァの耳がわずかに動く。

「行くよ」
そう言っているようだった。


⚡ スタート──雷の反応

スタートの反応は鋭すぎた。

跳ねるように飛び出し、
すぐに冷静にポジションを取る。

岩田望来の手綱に完璧に応え、
道中はずっと “手応え抜群”。

スタッフは震えながらメモを取る。

《今日のディーヴァ:嵐警報(最大)》


🌪 直線──嵐の末脚、再び

そして直線。

岩田望来が軽く促した瞬間、
ディーヴァの目が変わった。

「ここだ」

次の瞬間──
嵐の末脚が 雷みたいに炸裂した。

11.6 → 11.0 → 11.4
稍重とは思えない鋭さ。

観客が一斉に立ち上がる。

「来た……!」
「ディーヴァがリバティに迫ってる!」
「差すぞ……差す……!」

リバティアイランドの背中が近づく。
あと少し。
あと一歩。

でも──

届かない。

わずか “1馬身”。
その差は、
大舞台の女王と嵐の歌姫の距離だった。


🌧 ゴール後──悔しさのツン顔

ゴール後、
ディーヴァはツンとした顔に戻る。

でもその目は、
明らかに悔しさで揺れていた。

「負けたくなかった」
「届きたかった」

その気持ちが、
ツン顔の奥で静かに震えていた。

スタッフがそっと声をかける。

「よく頑張ったよ」
「相手が強かっただけだよ」
「君は嵐だった」

ディーヴァはそっぽを向く。

……けれど。

耳が、
ほんの少しだけ倒れた。

デレた。

その一瞬に、
スタッフ全員の胸が熱くなる。


🌩 涙と嵐の2着

ディーヴァは負けた。
でも、
嵐のように走り、
嵐のように迫り、
嵐のように観客を震わせた。

その姿に、
スタッフの目から涙がこぼれた。

「この子は……本物の歌姫だ」

秋華賞の空は晴れていたのに、
胸の奥には
静かな雨が降っていた。

嵐の歌姫は、
この日、
“敗れて強し” を世界に刻んだ。

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