🌸 風が吹けばディーヴァが走る──マスクトディーヴァ喜劇譚 第6話

🌸 風が吹けばディーヴァが走る──マスクトディーヴァ喜劇譚

🌩 第6話 走るってなに?怒ると速いってほんと?

今日は、ちびディーヴァの 初めての“走る練習” の日だった。
スタッフは全員そわそわしている。

「大丈夫かな……」
「いや、前髪は絶対大丈夫だろ」
「そこじゃないってば」

ディーヴァはというと、
歩くだけで 耳がツンツン している。
緊張なのか、やる気なのか、ただのツンなのかは不明。

スタッフが優しく声をかける。

「じゃあ、ちょっとだけ走ってみようか」

その瞬間──
ちびディーヴァの耳がピクッと動いた。

そして、小走りを始めた。

……速い。

「え、ちょっと待って速くない!?」
「小走りってレベルじゃないよね!?」
「他の子の全力より速いんだけど!?」

周りの子たちはぽかんと見つめている。
完全に“何あれ”という顔。

スタッフが慌てて声をかける。

「ディーヴァ、ちょっと落ち着いて!」

その瞬間──
加速した。

「なんで!?」
「注意したら速くなるの!?」
「怒ってる!? 怒ってるから!?」

ディーヴァはツンとした顔でこちらを見る。
「怒ってないし!」
と言いたげな目つき。

でも、怒るとさらにスピードが上がる。

「やばい、これ怒らせたらダメなタイプだ」
「怒らせない作戦会議しよう」
「まず“落ち着いて”って言うの禁止ね」

スタッフの会議が始まる。

走り終わったちびディーヴァは、
急に しおらしく なった。

耳は少し倒れ、
目はふにゃっと柔らかく、
鼻息も控えめ。

「……ギャップすご」
「さっきの速さどこ行ったの?」
「この子、感情で走ってない?」

スタッフは結論を出した。

「この子は“感情で走るタイプ”だ。」

怒ると速い。
褒めると照れる。
照れると遅くなる。
でも、風が吹くとまた速くなる。

その不思議なリズムに、
スタッフは気づき始めていた。

「この子……嵐みたいな才能を持ってる」

まだ小さな体なのに、
その走りには風の匂いがあった。

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