🌸 第4話 初めての外の世界は、ちょっとまぶしくて、ちょっとツンツン
朝の光が厩舎の隙間から差し込んでいた。
今日は、ちびディーヴァが 初めて外に出る日。
スタッフはそわそわしている。
「大丈夫かな……」
「いや、前髪は絶対大丈夫だろ」
「そこじゃないでしょ」
そんな会話が飛び交う。
マスクオフ母さんは落ち着いていた。
「行ってきなさい」と言わんばかりに、
娘の背中をそっと鼻先で押す。
ちびディーヴァは一歩、外へ。
その瞬間──
まぶしっ……!
と言いたげに目を細めた。
(もちろん無言だけど、完全にそういう顔。)
風がふわっと吹く。
スタッフの髪は乱れる。
ディーヴァの前髪は、今日も完璧。
「なんで!?」
「外でも!?」
「前髪の神に愛されてるの!?」
スタッフの動揺をよそに、
ちびディーヴァは慎重に地面を踏みしめる。
よちっ……よちっ……
まだぎこちないけれど、
その一歩一歩がなんだか誇らしげ。
外の匂いを吸い込んで、
耳をピンと立てて、
風の音に反応して、
世界をひとつひとつ確かめている。
スタッフがそっと近づくと──
ジトッ……
ツンとした視線が飛んでくる。
「怒ってる?」
「いや、警戒してるだけじゃない?」
「いやいや、あれは“初めての外で緊張してるツン”だよ」
スタッフの勝手な解釈大会が始まる。
そのとき、
ちびディーヴァの前髪が朝日に照らされて キラッ と光った。
「うわ、外でも光るの!?」
「反射率どうなってるの!?」
「写真撮っていい!?」
スタッフがざわつく。
ディーヴァはというと、
「やめてよ」と言いたげに
ほんの少しだけ顔をそむけた。
でも、
「前髪きれいだね」
と誰かがつぶやいた瞬間──
耳が ちょこん と倒れた。
それは、どう見ても
照れていた。
スタッフ全員、固まる。
「……今、デレたよね」
「いや、外デレ!? 初外デレ!?」
「尊い……」
ちびディーヴァは気にせず、
また一歩、外の世界へ踏み出した。
その背中は小さいのに、
どこか風をまとっているようで、
スタッフは思った。
「この子、きっと走るんだろうな」
まだ言葉もない。
まだ走り方も知らない。
でも、
風が吹けば前髪が光り、
前髪が光けばディーヴァが動く。
そんな予感だけが、
春の空気の中で静かに揺れていた。


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