🌩 第13話 忘れな草賞、嵐のように荒れる心
朝の空気が、どこか落ち着かない。
ちびディーヴァも同じだった。
いつものツンツンした耳が、
今日は妙に落ち着かず揺れている。
スタッフが小声で囁く。
「……今日は嵐の予感だね」
「前髪は完璧だけど、心がざわついてる」
🌬 パドック──ツンが強まる
阪神競馬場のパドック。
他馬たちが堂々と歩く中、
ディーヴァはツンとした顔で周囲を睨む。
「負けたくない」
その気持ちが、ツン顔をさらに強くする。
でも、
その奥にはほんの少しだけ不安の影。
🌩 ゲート前──揺れる心
ゲート前に立つと、
ちびディーヴァの目が一瞬だけ揺れた。
初めての強敵たち。
初めての重賞級の空気。
初めての“勝ちたい”気持ち。
その全部が、
小さな胸の中で渦を巻いていた。
🌪 スタート──悪くない、でも…
スタートは悪くなかった。
むしろスムーズに出た。
道中も、
横山武史の手綱にしっかり応えていた。
……けれど。
気持ちが揺れていた。
他馬に囲まれると、
ディーヴァの耳がピクッと動く。
イラッ。
そのイラッが、
逆に 力み になってしまう。
「落ち着いて……」
スタッフの祈りは届かない。
🌧 直線──伸びきれない悔しさ
直線に向いた瞬間、
ディーヴァは一瞬だけ加速した。
でも、
いつもの“嵐の末脚”にはならなかった。
気持ちが揺れたまま、
脚も揺れてしまう。
前の馬との差が縮まらない。
そして──
クビ差の7着。
負けた瞬間、
ディーヴァのツン顔がさらに強くなる。
「悔しい」
その感情を隠すためのツン。
🌙 レース後──静かに沈む嵐
スタッフが優しく声をかける。
「よく頑張ったよ」
「相手が強かっただけだよ」
ディーヴァは、
珍しくツンと返さなかった。
ただ、
ほんの少しだけ目を伏せた。
落ち込んでいる。
でも、素直に落ち込めない。
その心は、
嵐のように荒れて、
そして静かに沈んでいく。
スタッフはそっと記録する。
「この子、初めて“負けたくない”を知ったんだ」
忘れな草賞の空は晴れていたけれど、
ディーヴァの胸の中には
小さな嵐がまだ残っていた。


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