🌩 第12話 勝つってうれしい…けど素直に言えない
新馬戦を勝った翌朝。
牧場はお祝いムードに包まれていた。
……のに。
ちびディーヴァは、
いつも以上にツンツンしていた。
スタッフが笑顔で近づく。
「ディーヴァ、おめでとう!」
「昨日すごかったよ!」
すると──
ふいっ
そっぽを向く。
でも、耳が……
ちょっと赤い。
スタッフは小声で囁く。
「絶対うれしいでしょ」
「いや、耳が全部言ってるよ」
他の馬たちも祝福に来てくれる。
「昨日の走り、見たよ」
「すごかったね」
ちびディーヴァは、
照れて すたたたっ と逃げる。
逃げた先で振り返り、
「別にうれしくないし」
という顔をする。
スタッフは即ツッコミ。
「いや、絶対うれしいでしょ」
「その顔、完全に“うれしいのに言えない”やつ」
ご褒美のニンジンを差し出すと──
ぱくっ
そこだけ素直。
食べている間だけ、
目がふにゃっとして、
耳がちょこんと倒れて、
完全に デレ顔 になる。
スタッフ全員、悶絶。
「ギャップがすごい……」
「勝った翌日のデレ顔は反則……」
「この子、ツンデレの才能まで持ってるの……?」
鳴き声も、
昨日より少し柔らかかった。
怒り声のビブラートも、
ツン声の鋭さもなく、
どこか甘い響き。
ディーヴァ自身も、
その気持ちを持て余しているようだった。
勝ったのがうれしい。
でも、素直に言えない。
言えないからツンになる。
ツンになると照れる。
照れるとまた逃げる。
そのくるくる変わる感情が、
まるで春の嵐のように
形を変えていく。
スタッフは確信した。
「ツンデレの始まりだ……」
そして同時に、
嵐の歌姫がまたひとつ
新しい魅力を手に入れた瞬間でもあった。


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