​🌹『メイケイエール様は止まらない!―白いシャドーロールの爆走お嬢様日記―』🐎💨  第31話

​🌹メイケイエール様は止まらない!暴走お嬢様日記🐎💨

​🐎 第31話:【京都牝馬S】最後のおしゃれ —愛されていることの、誇り— ✨💖

​2024年2月17日。京都競馬場。

凍てつく冬の空気をも溶かすような、柔らかな陽光がターフを照らしていました。

引退発表後、初めてファンの前に姿を現すメイケイエール様。この日のパドックは、異様なほどの熱気に満ちていました。

​数千人のファンが、幾重にもパドックの柵を囲んでいます。けれど、いつもなら聞こえる「今日は折り合うか?」「池添、抑えろよ!」といった殺伐とした野次は、どこにもありませんでした。

代わりにあったのは、まるでお嬢様の門出を祝うような、祈りにも似た静謐な期待。

お嬢様は、その空気を全身で受け止めるように、これまでで一番と言えるほど「優雅に」歩を進めていました。

​丁寧に編み込まれた黄金色のたてがみ。一点の曇りもない鹿毛の輝き。そして、彼女の象徴である真っ白なシャドーロール。

『……あら。皆様、わざわざ私の「最後から2番目のおしゃれ」を拝見しにいらしたの? 宜しくてよ。今日は存分に、このメイケイエールという「美の結晶」をその眼裏に焼き付けなさいな。』💅💎✨

​池添謙一が背に跨り、本馬場へと入場した瞬間、スタンドから地鳴り。

「エール、ありがとう!」「無事に、無事に帰ってこいよ!」📢✨

ファンたちの掲げる横断幕には、彼女のこれまでの軌跡を讃える言葉が溢れていました。

3番人気。馬券の期待以上に、彼女の「存在」そのものに10万人の視線が吸い寄せられていました。

​15時35分。京都牝馬ステークス、発走。

――ガシャン!

​12.1 – 11.2 – 11.2。🚀🌪️

お嬢様は、池添の繊細な手綱捌きに応えるように、爆発しそうな衝動を胸の奥に押し込み、中団の内側に潜り込みます。

4コーナーから直線。お嬢様がエンジンを点火しました!

「行け、エール! その脚を見せてくれ!!」池添の叫び。

しかし、かつての「雷」のような鋭さは、加齢と激闘の代償として、わずかに影を潜めていました。

​内からソーダズリング、外からナムラクレアが、若さ溢れる末脚で突き抜けていく。

お嬢様は、もがいても、もがいても、かつての自分のように前へ進めないもどかしさを感じていました。

脚が重い。息が苦しい。届かない……。

結果は、無情にも10着。掲示板すら届かない、完敗でした。

​けれど、ゴール板を駆け抜けた瞬間。

お嬢様の耳に飛び込んできたのは、敗者に対する罵声ではありませんでした。

「エーーール!!! よく走った!!!」

「エール! 大好きだぞーーー!!!」

「ありがとう! お疲れ様!!」 📢😭✨

​スタンドから降り注ぐのは、震えるような、割れんばかりの「エール」の嵐。

10着。負けた。それなのに、京都競馬場を埋め尽くした観客たちは、涙を流しながら、笑顔で彼女の名前を呼び続けていました。

まるでお嬢様が1着でゴールしたかのような、熱狂と慈しみの奔流。

​お嬢様は、肩で激しく息をしながら、信じられないものを見るようにスタンドを見上げました。

今まで、勝った時も、暴走した時も、常に自分の名前は呼ばれてきた。

けれど、今日聞こえるこの声は、今までとは決定的に違っていました。

それは、彼女の「強さ」だけでなく、その「不器用さ」も、「暴走」も、「美しさ」も、全てを愛しているという、世界で一番温かな全肯定のメッセージ。

​『……え? 皆様、どうして……? 私は負けましたのよ? 見苦しい姿を晒しましたのに、どうしてそんなに優しい顔で、私の名前を呼んでくださるの……?』💅💧

​池添が、お嬢様の首筋を何度も、何度も優しく叩きながら、愛おしそうに囁きました。

「……聞こえるか、エール。お前が勝とうが負けようが、どんな走りをしようが、みんなお前のことが、お前の生き様が大好きなんだ。……お前は、こんなに愛されてるんだよ。」🤝✨

​お嬢様は、瞳に溜まった涙を堪えるように、もう一度スタンドをじっと見つめました。

自分はただ、誇りのために、自分のわがままのために走ってきた。

でも、そのわがままを、この無茶苦茶なドラマを、こんなにも多くの人が「自分の物語」として愛してくれていた。

​『……ふん。皆様、本当にセンスが宜しくてよ。負けた女王にこれほどの祝福を送るなんて、最高に贅沢な方々ですわ。……でも、そうですわね。私、……どうやら、心底愛されてますのね。』💅🌹✨

​その「自覚」を得た瞬間、お嬢様の瞳には、かつての破壊的な光ではなく、誇り高く穏やかな「愛の光」が宿りました。

引退まで、残されたランウェイはあと一戦。

「愛されている女王」としての最後の舞台、高松宮記念に向けて。

お嬢様は、ファンの震える声を一滴残らず吸い込むように、凛とした足取りで検量室へと引き上げていきました。🐾🔥

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