🌸📘 あとがき
長い旅だった。
ナムラクレアという一頭の小さなスプリンターが、
風とともに駆け抜けた季節を、
こうして物語として紡ぎ終えた今、
胸の奥に残っているのは、
派手な勝利の記憶ではなく、
“届かなかった日々”の温度だった。
勝てなかったレース。
あと少しだった直線。
悔しさと、誇りと、
それでも前へ進もうとする小さな背中。
その全部が、
クレアという馬を、
そしてこの物語を、
静かに、確かに形作ってくれた。
物語を書きながら、
何度も思った。
「勝てない物語は、
こんなにも美しいのか」と。
勝利だけが価値じゃない。
栄光だけが物語じゃない。
“走り続けた時間”そのものが、
ひとつの春だった。
クレアが最後に見せてくれたのは、
勝ち負けを超えた、
風のような強さだった。
走れなくなっても、
風はそばにいる。
春は終わらない。
物語は消えない。
そして──
この物語を読んでくれたあなたの中にも、
きっとひとつの“春”が残っている。
ナムラクレアという一頭の馬が、
風の中へ溶けていったあとも、
その春は、
静かに息をし続ける。
ありがとう。
この物語を、
最後まで見届けてくれて。
風の中で、
また会える日まで。



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