🐎【第20話】宵闇の告白、落ちない愛(アイ)と「お淑やかな感謝」 🐎
🌙―― 2023.5 栗東・決戦前夜の控室 ――🌙
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栗東の夜は、静寂の中に微かな若草の香りを運んできます。✨
明日は、ヴィクトリアマイル。連覇を懸けた、負けられない大一番。
けれど今夜の私は、いつものように「鏡をピカピカに磨きなさい!」と騒ぎ立てる気分ではありませんでした。
カツン、カツン……。
少しだけ重く、けれど誰よりも聞き慣れた、愛おしい足音が近づいてきます。
今浪さん。私がこの世界で、誰よりも我儘をぶつけ、そして誰よりもその大きな掌に守られてきた、唯一無二の「おじさま」。
(……ふふ、来ましたわね。……今夜くらいは、お転婆なアイドルではなく、最高に気高く、慎ましやかな『淑女(レディ)』として、彼を迎えて差し上げなくてはなりませんわ) 📸💎
🧼 【静寂:泡の音さえ愛おしい「魔法の時間」】
今浪さんは何も言わず、私の純白の髪にそっとブラシを当て、丁寧なヘアケアを始めました。
引退。定年。……公式な発表はまだ先でも、トレセンを流れる空気、彼の指先が私の髪に触れる瞬間の、あの慈しむような震えが、すべてを物語っていました。
(……今浪さん。貴方のその手……。あの日、中京の泥を必死に、必死に落としてくれた時より、少しだけ節くれ立ちましたわね。……私の髪を何千回、何万回と整えて、白く、白く磨き続けてくれた……。世界で一番、魔法に満ちたその掌……) 🧼🫧
私は、静かに、ゆっくりと頭を今浪さんの肩に預けました。
いつもなら「重いですわよ、離れなさいな!」と照れ隠しに怒鳴るはずの距離。
でも、今夜の今浪さんは、優しく笑って私の額をそっと撫でてくれました。
🍎 【不器用な贈り物:アップルパイに溶けた『秘めたる』言葉】
今浪さんが、小さく、丁寧に切り分けられたアップルパイを差し出します。
(……あら、今日のアップルパイは……。なんだか、少しだけ塩っぱい味がしますわね。……今浪さん、貴方の涙が隠し味にでもなっていまして? ……おーほほほ、冗談ですわよ。……嘘ですわ。……本当は、全部、分かっていますの) 🍎💧
私は、そのアップルパイを一口ずつ、上品にフォークで運んで音を立てないようにお淑やかに味わってから、心の中で彼に、一生分の言葉を贈りました。
(……今浪さん。私を『純白の女王』にしてくれて、本当にありがとう。……泥だらけでボロボロになった私を、一度だって見捨てずに、何度でも真っ白に戻してくれて、ありがとう。……貴方が磨き続けてくれたこの姿は、私の生涯の誇りですわ。……明日は、貴方の人生で一番美しく、一番誇らしい『白』を、府中の直線に刻んで差し上げますから!) 💅✨
「ソダシ、明日も無事に帰ってこいよ。お前が元気に走って、元気に飯食うのが、俺の一番の幸せやからな」
今浪さんの掠れた、震える声。
私はそれに答えるように、今浪さんの作業着の袖を、小さく、優しく引っ張って甘えました。
🏁 決意:二人で歩む「最後にして最高のランウェイ」
SNSでは『ソダシ連覇なるか』『今浪さんの集大成』という言葉が、嵐のように飛び交っています。
でも、そんな地上の喧騒なんて、今の私にはどうでもよかった。
(……お聞きなさい、世界。明日の私は、誰のためでもない。……私を信じ、愛し、真っ白に磨き続けてくれた、この不器用で、誰よりも温かい男のために走りますわ。……見ていなさいな。二人で辿り着く、最高のフィナーレですわよ!) 🐎🏁🤍
女王は、今浪さんの匂いが染み付いた控室の闇の中で、静かに、けれど誰にも消せないほど強く、瞳を輝かせました。
それは「アイドル」でも「怪物」でもない、一人のウマ娘が、一人の人間に捧げる、究極の「愛」の誓いでした。


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