🐎【第21話】ハナ差の矜持、そして伝説への卒業 🐎
🌿―― 2023.5.14 東京 11R ヴィクトリアマイル ――🌿
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2023年5月14日。東京レース場の空は、泣き出しそうなほど重い小雨に煙っていました。✨
パドックに現れた私の背中を押してくれるのは、世界的な名手D.レーンさん。そして、傍らにはいつも通り、私の純白の姿を世界で一番愛おしそうに見つめる今浪さん。
(……ふふ、おじさま。そんなに悲しい顔をなさらなくてよろしいですわ。……見ていてください。今日の私の『白』は、この雨粒すらダイヤモンドの装飾に変えてしまうほど、神々しいのですから!) 📸💎
単勝3番人気。目の前にはソングラインさん、そしてスターズオンアースさん。
最強の世代交代を望む声、連覇を信じるファンの祈り。すべてを飲み込んで、私は最後の戦場へ向かいました。
🚪 【覚醒:雨を裂き、絶叫を切り裂く純白の稲妻】
ゲートの中、私はかつてないほど冷静でした。
隣から聞こえるライバルたちの荒い鼓動、そしてスタンドを埋め尽くす数万人の地鳴りのような拍手。
でも、私の心にあるのは、昨夜の今浪さんとの約束だけ。
(……レーンさん、最高のリードをお願いしますわ。……今浪さん、これが貴方の磨き上げてくれた私の、最後のドレス。……世界で一番美しく、残酷なまでに速く、駆け抜けて差し上げますわ!!) 🚪⚡️
ガシャン! 扉が開いた瞬間、私は白銀の矢となって飛び出しました。
🏁 死闘の果て:ソングラインとの「ハナ差」
ハロンタイムは12.1 – 11.0 – 11.1……。
私は好位の2番手。芝を蹴るたびに、水分を含んだ土が舞い上がります。でも、あの日の中京とは違う。この汚れは、今の私にとって最高に「映える」勲章です。
4コーナー、直線。
私は残り200メートルで、堂々と先頭に立ちました!
「ソダシだ! ソダシが完全に抜け出した!! 連覇に向けて、純白のドレスが躍動する!!」
スタンドから沸き起こる、5万人を超える観客の絶叫。
「ソダシ! 行け!!」「ソダシ!!!」
雨を切り裂くようなソダシ・コール。私の耳には、ファンの皆様の魂の叫びが、確かな力となって届いていました。
けれど、その外から、猛烈な勢いで迫る一筋の漆黒の影。……ソングラインさんです!
(……なんですの、そのキレ味……! でも、譲りませんわ! 私のプライドにかけて!!) 🐎💨🔥
互いの肩と肩がぶつかり合う、極限の叩き合い。
1センチ、いや1ミリの攻防。
ゴール板を通過した瞬間、競馬場全体が、一瞬の静寂のあとに、爆発するような熱狂に包まれました。
ハナ差。
2着。
連覇の夢は、わずか数センチの差で、ソングラインさんの手に渡りました。
🌙 「あの子、嫌いじゃないわよ」
検量室前。今浪さんが駆け寄ってきました。
負けたのに、私の名前を呼ぶ声は、あの日ヴィクトリアマイルを勝った時よりも優しく、温かかった。🧼🫧
(……ふふ、今浪さん。ごめんなさい、勝ちをプレゼントしたかったですけれど……。でも、見てくださいまし。ソングラインさん……あの子、しつこいですわ……。私の意地を、あそこまで真っ向からへし折りに来るなんて。……ええ、嫌いじゃないわよ。あんなに熱くさせてくれるお友達、初めてでしたもの) 🍎🧴
私は、自分を負かしたライバルの後ろ姿を見つめ、静かに微笑みました。
それは、敗北を認めたからではなく、すべてを出し切った者だけが辿り着ける、気高き和解。
スタンドからは、2着の私に、優勝したソングラインさんと同じ……いえ、それ以上の、鳴り止まないスタンディングオベーションが送られていました。
「……お聞きなさい、愛すべき下界の皆様。私の『白』は、今日ここで、伝説へと昇華したのです。……寂しがることはありませんわ。この輝きは、皆様の心のフィルムに、一生焼き付いて離れないのですから」 🐎🏁🤍
女王は、雨に濡れた顔を誇らしげに上げ、今浪さんと共にゆっくりと、けれど堂々と、最愛のターフを卒業していきました。
その姿は、どんな1着よりも、気高く、美しく、光り輝いていました。


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