🌸💫 『いつか届くと信じて走った──ナムラクレア』 💫🌸 第12話

🌸 『いつか届くと信じて走った──ナムラクレア』 🌸

🌑🔥 第12話 北九州記念2022──勝ち切れない影が胸に落ちる(GⅢ)


🔥💗 ① 勝ちたい気持ちが胸を焦がす
函館スプリントSの勝利から二ヶ月。
あの日、風と一体になれた感覚は、
胸の奥でまだ温かく灯っていた。

「……わたし、かてる……
 スプリントなら……!」

その光は、希望だった。
でも同時に、焦げつくような熱でもあった。

勝ちたい。
本当に勝ちたい。

その気持ちが、
胸の奥でじわじわと熱を帯びていく。

“勝てるはず”
その思いが、逆に胸を焦がした。


☀️💦 ② 暑い小倉の風が重い
小倉の夏は、北海道とはまるで違った。

湿気を含んだ熱気が、
肌にまとわりつくように重い。

返し馬の途中、
クレアの呼吸が少しだけ浅くなる。

「……あつい……」

風が重い。
空気が厚い。
体がほんの少しだけ鈍い。

汗が首筋を伝う。
蹄が地面を叩くたび、
熱が跳ね返ってくる。

夏の小倉は、
クレアの体にまとわりついて離れなかった。


🐎🔥 ③ 勝ちに行く覚悟の蹄音
ゲート裏。
鉄の匂い。
馬たちの荒い息。
係員の短い声。

その全部が、
クレアの胸を静かに整えていく。

浜中俊が、
そっと手綱を引いた。

「クレア、今日は勝ちに行く。
 迷わず行くぞ」

その声は、
熱気の中でも揺らがない。

クレアも迷わなかった。

「……いく……!」

蹄が地面を叩く音が、
覚悟の音に変わった。


💨💔 ④ 届かないという現実
ゲートが開いた瞬間、
体は前へ飛んだ。

芝を蹴る音。
観客の声。
夏の風。

全部が一気に押し寄せる。

直線に入る。
浜中の手綱がわずかに動く。

「行け、クレア!」

伸びる。
まっすぐ伸びる。

でも──
前に、もう一頭いる。

ボンボヤージ。
その影が、
どれだけ伸ばしても近づかない。

「……また……?」

届かない。
本当に、届かない。

最後の50mが、
永遠みたいに長かった。


🌑💧 ⑤ 影が胸に落ちる
ゴールを過ぎた瞬間、
胸の奥がずしんと沈んだ。

負けた理由がわからない。
脚は動いた。
気持ちも折れていない。

なのに──
勝てなかった。

「……どうして……?」

その問いが、
胸の奥に影を落とした。

熱気の中で、
その影だけが冷たかった。


💘😣 ⑥ 「勝ち切れない」の痛み
勝てるはずなのに勝てない。
届くはずなのに届かない。

その痛みが、
胸をぎゅっと締めつける。

観客の声が揺れる。

「クレア、惜しい!」
「また届かないか……」
「でも強いよ!」

その声が、
胸に刺さる。

「……つよい……だけじゃ……だめ……」

勝ち切れない痛みが、
心に深く沈んでいった。


🌬️⚡ ⑦ スプリンターズSへ向かう影
レース後、
浜中俊が静かに言った。

「クレア、次はGⅠだ。
 影を抱えたままでも、前に進むぞ」

その声は優しい。
でも、クレアの胸の影は消えなかった。

次は──スプリンターズS。

風の頂点。
スプリントのGⅠ。

「……いく……こわいけど……いく……」

夏の風が、
新しい影を運んでくる。

でも、クレアはもう逃げなかった。

影を抱えたまま、
風の頂点へ向かっていく。

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